2011/05/27
ケーブルや機材の比較試聴のコツ①

スタジオのエンジニアにしても、オーディオをしている人でも、
自分の環境で使うケーブルの選択をする時は、試聴をして音質を判断すると思います。
私はORGANIC WIREを作ったりスタジオをやってきた経験上、
たくさんの試聴実験をしてきて、試聴においてのコツというものがあると思っています。
うちに来るアーティストとケーブルの話をしている時、
試聴方法を聞いてみると、それでは判断しにくいだろうな~っという様な、
方法になっている人も多いです。
色々試してコツを理解している人には必要ないかもしれないですが、
知らない人は知っておくと遠回りせずにすむと思いますので、
いくつかブログに書いてみようと思います。
まず今回、比較試聴のコツという事ですが、
ある意味では全ての比較に通ずる部分があるだろうと思います。
機材やケーブル比較以外でも、テイクの判断やアレンジの判断、
さらに音楽以外のジャンルの事柄でも共通する部分が多いのではないかな、
っと個人的に思います。
例えば、画家が絵の具やキャンパスを比較する時、料理人が調味料を選ぶとき等・・・。
ただそこまで拡大して書くとキリがありませんので、
今回は分かりやすく『ケーブルの比較』で例を挙げていきます。
まず、ひとつめのコツは、
●試聴につかう音源の選び方、です。
ケーブルを比較する際には、それを通った音楽を聴いて、
使いたいケーブルの音質を聴き分けていくわけですね。
その時に聴く音源は出来るだけ幅の広いジャンルの音源を用意した方が良いです。
もちろん好みの問題もありますが、普段聴かない音源も使う必要があります。
なぜなら音源というものは、
『時代やジャンルによってMIXやマスタリングにある程度の共通傾向』があるからです。
ですので、同じジャンルや同じ時代の音源ばかりでは、
厳密な判断がしにくくなると思います。
例えば、普段トラックメイクしている人は、現代のClubトラック以外にも、
古い時代のアコースティック系の音源も試聴音源にいれるといいです。
もちろん録音の質は高いものがベストだと思います。
Clubトラックは音圧を稼ぐために、ダイナミクックレンジを狭くしています。
古めのアコースティック系のもの(例えばJAZZなど)はダイナミックレンジが広いので、
こういった音源も試聴音源に入れると、奥行き感や音量の表現力を判断することがしやすくなります。
次のコツは、
●試聴する音源に目的意識を持つということ、です。
これはただ闇雲に音楽を聴くのではなく、
その音源を聴いて何を判断するかをしっかり意識するという事です。
もちろん全体をざっくり聴いて判断することも重要ですが、
曲ごとに目的意識を持っておくと判断がしやすくなります。
例えばあるJAZZの音源では、
奥行き感とアコースティック楽器の質感を判断したり、
あるClubトラックでは、複雑にレイヤーされたシンセの見え方で、
周波数の分離や定位といった解像度をみたりっといった感じです。
特にDAWを使っている人は、曲中でも特に判断しやすいポイントがあるので、
その部分をはじめに切っておくと良いと思います。
私の場合もDAWに様々な楽曲を判断しやすいポイントで並べてマーカーを打ち、
その部分がすぐに再生可能な状態にしてあります。
楽曲の選択は、
●現代的な周波数レンジを持つ音源。→周波数バランスの判断。
●定位や音の配置が複雑な音源。→横や高さの解像度の判断。
●ダイナミックレンジの広い音源。→奥行き感の表現力の判断。
●センターにほとんどの楽器が定位して残響が多い音源→センターのパワー感と残響の解像度の判断。
●自分で録音し、常に生音を聴いている楽器の音源→再生音の忠実性を判断。
といった感じです。
これらの目的にあった音源をその時々で選択して、試聴しています。
あとは好みの音源をざっくり聴いてみたりもしていますね。
曲の選択に関しては、こういった感じでセレクトすれば、
かなり厳密に音質傾向が判断できると思います。
次はアーティストやクリエーターがケーブル等の比較試聴する時の、
コツや注意することを書いてみたいと思います。
それでは。